生成AIを思いのままに!実践的なプロンプトのコツをデータサイエンティストが紹介

こんにちは。電通総研のAIトランスフォーメーションセンターで社内外の生成AI導入プロジェクトを推進している徳原です。
生成AIを実業務に取り入れている方が増加し、社内外から「生成AIが思うように動いてくれないので、実務で使っているプロンプト(生成AIへの指示文)を改善したい」という相談を受けることが増えました。
そもそも、自身が意図している回答内容が生成AIに正しく伝わっていなければ、狙い通りの出力は得られません。
この原則は、たとえ最新の生成AIモデルを使っていたとしても変わりません。GPT-5、o1、o3のような推論モデルを使っても、適切でない質問内容に対して推測を繰り返すことで、期待している回答から余計に外れていってしまう可能性もあります。
そこで本記事では、生成AIモデルにこちらの意図を確実に伝え、期待通りのアウトプットを得るための実践的テクニックを整理しました。これらのプロンプト作成のコツを押さえるだけで、高い確率で狙い通りの回答を引き出せるようになります。
プロンプトを記述する際に重要となるコツとは?
本題のテクニックの紹介の前に、現在の最新生成AIモデルがどんな性質を持っているか考えてみます。
生成AIモデルの性格を考えてみる
もし生成AIが新入社員としてあなたの職場に配属されてきたら、皆さんはどんな印象を抱くでしょうか?
私はおそらく「まじめで知識は豊富だけど、ちょっと扱いづらい後輩が来たな」という第一印象を抱くと思います。
最新の生成AIは膨大な情報を持ち、私よりはるかに博識です。しかし、問いかけに対しては常に“正論”を返し、こちらの指示を文字どおりに解釈した作業以上の内容はできません。人間の同僚として職場にいると想像すると、「頭でっかちで融通が利かない」という評価になりかねません。
この性質は、モデルが今後アップデートされるにつれて精度や知識量が向上しても、大きくは変わらないと考えています。したがって、生成AIを業務で最大限に活用するには、「頭でっかちで融通が利かない後輩」にどのように的確な指示を出すかが鍵になります。
生成AIは業界・業務に特化した知識は持たず、原則学習もしない
「生成AIが新入社員として配属されたら」という例えをもう少し掘り下げます。新入社員=生成AI君に業務を任せる立場として、私たちはどのように指示を出せばよいのでしょうか。プロンプトを考える上で重要なポイントを以下にまとめました。
- 一般知識は豊富でも、業界・業務固有の知識はない
生成AIは大量の公開情報を学習しているため、一般的な知識量では人間を上回ります。
しかし、貴社の商習慣や部門特有の略語、業務フローなどの知識は限定的です。生成AIが標準で保有している知識は、IT領域など特定の分野で非常に専門性が高いですが、一般的には低くく見積もって大学の教科書レベルと捉えてください。
したがってプロンプトに、業務に不可欠な前提条件や用語を過不足なく盛り込む必要があります。 - 単語の羅列ではなく文章で指示する
生成AIは指示の背景や目的を文脈として理解します。そのため「会議 議事録 作成」など単語を並べるだけでは意図が伝わりにくく、期待通りの成果が得られません。「本日の営業会議の内容を整理し、要点を箇条書きでまとめてください」のように、誰が・何を・どうしたいのかを含む完全な文章で指示することが重要です。 - 生成AIはこれまでのユーザーとのやり取りを勝手に学習しない
生成AIは公開情報に基づく知識はモデルの開発時に学習していますが、業界固有の知識は持たず、自動で学習もしません。生成AIに新たな情報を覚えさせるには、ファイチューニングと呼ばれる再学習や、運用システムに生成AIの知識を補完するメモリ機能を導入する必要があります。
したがって、生成AIは基本的には常に入社1日目の新入社員のような状態と言えます。
そもそも、そのプロンプトは指示文として質が高いか?
ここからが本記事の核心になります。あなたが日々書いているプロンプトは、誰が読んでも誤解なくタスクを実行できる指示文になっているでしょうか。
優秀な方が集まっている職場ほど、そこで飛び交う指示文は簡単なものになりがちです。本当にチームワークが取れているメンバー同士なら具体的な指示はなくとも阿吽の呼吸で仕事は進んでしまうのかもしれません。
一方で生成AIくんは“頭でっかちで融通が利かない”うえに、知識レベルは大学学部生相当、しかも業界固有の事情を知りません。入社初日の新入社員に簡素なメモだけ渡して仕事を丸投げしたら、成果が伴わないのは当然です。それと同じことが、プロンプトでも起きています。

お客様に既存業務のヒアリングを実際にさせていただくと、どの職種・どの作業にも、本人が認識している以上に高度な判断や専門的なノウハウが詰まっていると感じます。
その複雑なタスクの一部を生成AIに委ねるのであれば、タスクの目的、背景、制約、評価基準を誰もが理解できる形で明示する必要があります。
そのため、生成AIに作業させるために指示を書こうとすると、自然と「何を・なぜ・どこまで伝えるべきか」を整理する習慣が身に付きます。
これはAIに限らず、人間の同僚や外部パートナーへの依頼など、仕事を円滑に進める上で重要となるコミュニケーション力そのものです。
生成AIを指示に従わせるプロンプトテクニック
ここからは、より実践的なテクニックを1つ1つ紹介していきます。プロンプトエンジニアリングのコツをつかんで期待通りの回答を生成AIから得ましょう。
返答の形式や内容を限定する
生成AIも人も、指示があいまいであるほど実行難易度は上がり、具体的であるほど難易度は下がります。
とりわけ生成AIに最終成果物として求める回答があいまいな場合、AI側は「何を、どのように回答すべきか」を推測しながら思考します。
その結果、AIが最適と判断した出力が利用者の意図からずれるケースが少なくありません。したがって、欲しい回答を明示的にプロンプトへ記載する必要があります。
一見すると高度な知能を備えているように見える生成AIですが、実際には「複数ステップの連続思考」や「並行処理」のような複雑な推論を苦手とします。さらに、一度の応答で使える思考リソースには限りがあるため、回答形式や内容を決める作業にリソースを割いてしまうと、肝心の回答精度が低下する恐れがあります。
あらかじめ返答の形式や含めるべき内容を明確に指示し、生成AIの回答の品質を高めます。
例えば、以下のようにプロンプトを記載してみましょう。
要約を指示するとき
- 「この文章を大学1年生が理解できるレベルの表現に変換し、150字以内で要約してください。」
- 「この文章から経済学的な視点で重要な部分を抽出し、3つの項目の箇条書きで要約してください。各箇条書きは20字以内に収めてください。」
アイデア出しを指示するとき
- 「清涼飲料水の新商品のアイデアを5つ出してください。条件は①20代女性向け ②価格帯3000円以内 ③SNSで話題化しやすいもの。」
- 「社内で実施する運動会のキャッチコピー+1行説明を3案提示してください。運動会実施の目的は社員の健康増進で、一人でも多くの方が参加したいと思えるキャッチコピーにしてください」
ポイントはこちらの4つになります。
- 数を指定する(3つ・5つ)
- 形式を指定する(箇条書き・表・ステップ)
- 制約条件を指定する(文字数・対象読者・文体)
- バリエーションを求める(3案・異なる視点)
さらに、以下のようにプロンプト内で例を示すことも有効になります。
社内で実施する運動会のキャッチコピー+1行説明の形式で3案提示してください。運動会実施の目的は社員の健康増進で、一人でも多くの方が参加したいと思えるキャッチコピーにしてください。
# 回答例
- 「からだも心もアップデート!」(楽しく体を動かしながら、健康習慣を続けたくなるようなキャッチコピー)
- 「ひと汗かいて、つながる笑顔」(運動を通じて部署を超えた交流と健康づくりを実現したくなるような表現を入れました)
指示を分解して難易度を下げる
生成AIを活用するうえで欠かせないテクニックのひとつが、「依頼するタスクの難易度を下げる」ことです。特に効果的なテクニックが、難しいタスクを複数のサブタスクに細かく分解して指示を与える方法になります。
たとえば、自社メールマガジンで配信する新サービス紹介メールの文面を生成AIに依頼するとします。
このとき「新商品○○の紹介メールの文面を出力してください」と一度に要求してしまうと、AIは①新商品の特長の推測、②紹介内容の取捨選択、③メール文としての構成・トーン決定など複数の思考を同時に行う必要があり、結果としてタスク自体の難易度が高くなってしまいます。
そこで次のようにタスクを分解し、各タスクを個別に指示します。
- 新サービスのターゲット顧客が自社サービスに求めている要素を分析する
- ターゲットが求めている要素を踏まえて、新サービスの詳細情報からアピールすべき新サービスの特長を整理する
- 整理した特長を効果的に表現できるメール文を作成する
最初の「ターゲット顧客が自社サービスに求めている要素を分析する」タスクについては、以下のようなプロンプトで生成AIに指示を与えると効果的です。
架空の市場調査サービスを紹介するケースを例にします。
あなたはマーケティング戦略の専門家です。
以下の条件に基づき、新サービス(市場調査における競合分析サービス)に対して、ターゲット顧客が何を求めているのかを整理してください。
- 顧客像:eコマースを中心にPC関連のデバイスを販売している中小メーカー
- 顧客の現状課題:販売戦略や製品企画における競合情報の不足、価格や機能面での差別化の難しさ、リソース不足による調査の限界
- 出力フォーマット:
- 顧客が直面している主な課題(箇条書き)
- その課題を解決するために競合分析サービスに求める要素(箇条書き)
- 顧客が競合分析サービスに期待する成果(例:販売戦略の強化、新製品開発の方向性)
ここでも、指示は明確にする必要があります。回答がうまく得られなかった場合はさらにタスクを分解しましょう。
このプロンプトで上手く顧客が求めているポイントが得られたら、次に新サービスの詳細な情報をプロンプトに含めて、アピールすべき特長を分析させてみます。このようにステップ・バイ・ステップで生成AIに指示を出し思い通りの結果を得ます。
立場を指定する
先ほどの例にあげたプロンプトでは「あなたはマーケティング戦略の専門家です。」と冒頭に記載しましたが、プロンプトの冒頭で、立場を明示する手法は生成AIが流行りだした当初から使われていたテクニックで、現在も有効な手段になります。
生成AIは業務で使用するためだけに開発されたわけではなく、プライベートの場面でも友人同士で会話するような感覚で使用されることも想定されて開発されました。したがって、プロフェッショナルとして立場を明確にすると、タスクの理解度や回答精度が向上します。
立場を示すだけで、生成AIに多くの前提条件をまとめて伝えられます。たとえば「マーケティング戦略の専門家」と明示すれば、最終目的が自社製品の売上拡大であるという背景が推定され、入出力に含まれる専門用語の解釈も正確になります。
企業名に一定の知名度があり、生成AIがウェブ検索なしでも自社の基本情報を保持している場合は、企業名をプロンプトに含めるのも効果的です。たとえば「あなたは○○商事の製品企画部の社員です」と指定しておけば、業態や規模などを踏まえた回答が得られる可能性が高まります。
マークダウン記法に準拠した書き方を取り入れる
Markdown(マークダウン)記法という文章の表記方法をご存じでしょうか。プログラマーの間で「人にもコンピュータにも読みやすい」として普及した書き方で、IT業界以外の方にはなじみが薄いかもしれません。
Markdownは「人にもコンピュータにも読みやすい」という特徴から構造が明快でAIが理解しやすいため、生成AIの学習データにも数多く採用されています。その結果、生成AIはMarkdownで書かれたテキストを特に高い精度で理解できるようになっています。
具体的には、アスタリスクを2つで囲んだ箇所(例:強調箇所)は“強調”、行頭にハイフンを付けた行(例:- 項目1 - 項目2 - 項目3)は“箇条書き”、行頭に数字とピリオドを付けた行(例:1. 項目 2. 項目 3. 項目)は“番号付きリスト”というように、記号と意味が一対一で対応しています。同じ書式をプロンプトでも用いれば、生成AIが指示の意図を正確に汲み取る確率を高められます。
たとえば、重要で必ず守ってほしい条件がある場合は、前述の強調表現を活用し、
**必ず200文字で回答を生成してください**
のように記載します。
また、AIに思考の手順を示したいときは、番号付きリストを使用すると生成AIに順序を示せます。
- 与えられた文章を要約する
- 要約した文章を3つの箇条書きにする
- それぞれに短い説明を加える
といった形でプロンプトに番号付きリストを使えば、生成AIは各項目が順序を持つと認識しその順番を踏まえて思考するようになります。
太文字かつ英語の命令文
最後に、生成AIへの指示で最も効果が高いと感じるテクニックをご紹介します。
回答の長さや形式など「絶対に守ってほしい制約」がある場合、その指示を英語の命令文かつ大文字で書くと、日本語の平文で記載するよりも従われる確率が高まります。
たとえば、生成AIの回答が絶対に100文字以上300文字以下でなければいけない場面では、次のように書きます。
THE RESPONSE MUST BE BETWEEN 100 AND 300 CHARACTERS
このように記述すると、100〜300文字の範囲内で回答が返ってくる可能性が上がります。プロンプトエンジニアリングが注目され始めた初期から知られる方法ですが、今でも非常に強力です。
さらに「他の制約は無視しても構わないので、これだけは守らせたい」という場合は、Markdownの強調表現やエクスクラメーションマークを組み合わせて記載するとさらに効果が高まります。
**THE RESPONSE MUST BE BETWEEN 100 AND 300 CHARACTERS!!!**
なお、過度に強い語調のプロンプトは優先度が高くなりすぎ、ほかの指示が無視されるリスクもあります。基本は丁寧でわかりやすい指示を心がけ、どうしても必要な場合にだけ最終手段としてこの"太文字かつ英語の命令文"を使うのが賢明です。
今回紹介した他のプロンプトのテクニックは同僚とのコミュニケーションでも有効ですが、英語圏の人にこの表記方法を使うと恫喝しているように感じるそうなので人に向けた文章では使用しないようにしましょう。
まとめ
今回は、生成AIが思いどおりに動かない場面でも確実に指示を遂行させるためのプロンプトエンジニアリングのテクニックをご紹介しました。
- 入社1日目の新入社員でも理解できるようにプロンプトに記載する情報を整理する
- 返答の形式や内容を限定する
- 数・形式・制約・バリエーションを指定する
- タスクを分解して難易度を下げる
- 立場を指定する
- マークダウン記法を活用する
- 太文字かつ英語の命令文を使う
ここで取り上げた方法以外にも、プロンプトエンジニアリングの改善ポイントは多数あります。生成AIに入力するプロンプトについては生成AI自身が詳しいので、まずは生成AIに質問しながら試行錯誤し、最適な書き方を探ってみてください。
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執筆
AIコンサルティンググループ
徳原 光


