Microsoft Build 2025 現地参加レポート

こんにちは、AITC製品開発グループの青木です。

5月19〜22日にアメリカ・シアトルで開催された開発者向けカンファレンスMicrosoft Build 2025に新卒2年目にして参加しました!

Microsoft BuildはMicrosoftが開催するカンファレンスで特に今年は「AI Agent元年」と位置づけられるほど、AI Agentに関するアップデートが集中していました。そのため、生成AIを活用していく上で非常に重要な情報が盛りだくさんとなっています。

本記事ではそんなMicrosoft Build 2025の現地レポートをお届けします。是非最後まで読んでください!

本記事を読んで分かること

  1. Microsoft Buildの全体像
  2. Microsoft Build 2025で発表された主要アップデートの情報と現場に与える影響
  3. Microsoft Build Seattle Tourの現地の様子
  4. 電通総研の社風や共に働くメンバーの雰囲気

Microsoft Build 2025 全体像

Microsoft BuildはMicrosoftが主催する開発者向けの年次カンファレンスです。

2025年は5月19日から22日の4日間開催され、今年のシアトル会場参加者は3200人以上、日本からの参加者は150人以上です。

開催場所は「Seattle Convention Center Arch Building」という建物でした。

Microsoft Build 2025の主要アップデートと現場に与える影響

Microsoft Build 2025で紹介された主要アップデート情報を以下にまとめます。

Microsoft 365 Copilot(M365 Copilot/コパイロット)

UIを Chat / Search / Notebooks / Create / Agents に再編。

Microsoft 365 Copilotを「AIのためのUI」として活用する方向性が明確化されました。

 

Copilot Tuning(コパイロット チューニング)

  • 自社の知識を使用して、モデルを迅速かつ安全にトレーニングし、ドメイン固有のタスクを高い精度で実行するエージェントを作成可能となります。つまり専任データサイエンティスト無しでも Copilot Studioから自社データで手軽にモデルをチューニングできるようになります。
  • 今までは言語モデルのファインチューニングにはAIの専門家が必要でした。Copilot Tuningを利用すると、UI上からデータセットのラベル付けなどが可能であり、容易にモデルをファインチューニング可能です。そのため医療や法律などAI以外の専門家でもドメインに特化した言語モデルを作成可能となります。

生成AIにドメイン特化の回答を生成させる場合はRAG(Retrieval Augmented Generation)でよいのでは?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、RAGには以下のような課題があります。

  1. ユーザーからの質問文に対するドキュメントの検索性能
  2. セキュリティまで考慮したドキュメント管理
  3. Retrievalを含むため回答時間が増加

特に社外秘のドキュメントを元にしたRAGの場合、セキュリティまで考慮したドキュメント管理は重要です。しかし権限管理などを踏まえるとアーキテクチャが複雑になりがちです。

また、ドキュメントが膨大になると検索性能が劣化し、回答時間が増加します。

上記の課題に対して、言語モデルのファインチューニングは有効であり、重要な技術となっています。

Copilot Studio(コパイロット スタジオ)

Copilot Studioは独自のAIエージェントを構築できるサービスです。

Microsoft Build 2025では以下3つのアップデートが大々的に発表されました。

  1. Computer Use:エージェントがボタンをクリックし、メニューを選択し、画面上のフィールドに入力して、Web サイトやデスクトップアプリを操作可能。自然言語の指示に従い、データ入力や請求書処理から市場調査や監査まで、幅広いエンタープライズビジネスタスクに対してコンピュータを人間が操作するように実行。Microsoft がホストする仮想マシンへ大規模にデプロイすることで、迅速かつ低コストに実行可能
  2. MCP対応:MCP(Model Context Protocol)を使用すると、開発者はCopilot Studioから直接既存のナレッジ サーバーと API 経由で接続可能
  3. マルチエージェント オーケストレーション:Copilot Studio、Azure、Fabric のエージェントと連携しタスク分担して実行可能。これにより幅広いデータを基にした知識がさらに強化され、エージェント単体よりも効果的にプロセスを実行できる。エージェントはチーム間で再利用できるため、様々な組み合わせで実現可能

特にComputer UseはRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)とは異なり自然言語でシステムをGUIで操作できます。例えば、今朝の山手線の遅延状況や海外のニュースの情報などを以下の箇条書きレベルの指示で実際のWebブラウザを操作して情報を取得できます。

  1. Microsoft Edgeをデスクトップから起動します。
  2. JRの運行状況を確認するサイトを探してください
  3. 指定された電車路線の運行状況を確認してください。詳細ボタンがあれば、詳細を開きます。
  4. 運行状況を取得してください。
  5. 遅延している場合は遅延証明書をPDFとして印刷し、保存してください。
  6. ブラウザを閉じてください。

そのため請求書や勤怠の処理などのタスクに応用すれば工数の削減が見込まれます。

GitHub Copilot(ギットハブ コパイロット)

開発者向けにはGitHub Copilotが大きく進化し、今回のBuildの発表では、GitHub Copilot Coding Agentが紹介されました。

今までは、Completions、Chat/Edits、Agent Modeの3つがVisual Studio Code上で可能でした。

それぞれの機能は以下のようになっています。

  • Completions→コード補完
  • Chat/Edits→コードについての質問と会話。会話を元に修正など
  • Agent Mode→エディタの中でタスク依頼すると自律的にタスクを実行

Coding Agentでは、Visual Studio CodeではなくGitHub上にCoding Agentが存在します。そのためGitHub上でCoding Agent にIssueをアサインするとIssueの内容とリポジトリのコードを踏まえてPull Requestを作成可能になります。

※こちらの機能はCopilot Freeを除くすべてのプランで使用可能です(参考

GitHub Copilot Coding AgentやChatGPTのCodexを業務で適用してみました。所感としてはまだ完全にAI Agentがすべてのコーディングを代替できるレベルではないと感じています。

しかし、活用できない原因はモデルの性能もありますが、リポジトリの整備や与えるプロンプトの影響が大きいと考えています。今後はプロダクトに必要な機能や仕様を言語化し適切なプロンプトとして記述できる人材が求められると考えています。

またモデルの性能については、BuildのKeynoteでSam Altman氏が今後「1〜2年後で(生成AIが)可能なことが劇的に変わる」と述べていました。そのため将来を見据えて積極的に新しいツールや技術、ワークフローなどを現在から取り入れ、モデルの進化に関与する姿勢が今後も重要であると感じます。

Azure Cosmos DB

AI Foundryと各種データベースの連携が大きく強化されました。特にAzure Cosmos DBとの統合性が向上し、AI Agentサービスのスレッドデータが、ユーザー管理下のAzure Cosmos DBに保存可能になりました。これにより、会話履歴やエージェントの応答履歴を自社で管理・分析しやすくなります。

今後AIエージェント型アプリケーションを開発・運用する企業が増えていくと思います。

そういった中で、生成AIの回答精度の向上や社内のユーザーの行動などの洞察を得ることができる点で、会話履歴やエージェントの応答履歴を分析することはますます重要になると考えています。

SRE(Site Reliability Engineering)エージェント

運用の自動化を目的としたSREエージェントが発表されました。

インシデント管理や自動デバッグ、コード修正の提案など、運用現場の自動化ができます。

具体的には、サービスのメトリック低下をトリガーにエージェントが自動調査・原因分析・ロールバックまで実施し、従来人手で行っていた作業を大幅に効率化します。

今まで夜中に電話で起こされてバグの対応をしていたものが、SREエージェントによって自動で検知され、Prod環境とスワップしクリティカルな事象に対応。さらに根本原因まで分析し、Issueとして追加まで対応可能です。

まとめと所感

「AI× DevOps」を推し進めるアップデートが盛りだくさんでした。 GitHub Copilot Coding Agentが、Pull Requestのアサインから自動で対応し、SREエージェントが実行環境の運用時の問題を調査など、「開発と運用の両面でAI Agentが変革をもたらす」ということが現実味を帯びてきたと感じます。

システム開発には要件定義、設計、実装、運用保守からユーザーからの問い合わせ対応などさまざまな業務が含まれます。このうち実装、運用保守や問い合わせ対応の大部分を生成AIによって代替できれば、プロダクトの開発スピードが早まり、新機能などを含むユーザーへの価値の向上が見込まれます。

当然、プロダクトの要件の言語化や品質を担保するテストやコードレビューは人が作成、確認する必要がありますが、「あの機能が欲しい」と考えてから迅速に対応・実装される未来が訪れるのもそう遠くはないかもしれません。

今回取り上げたアップデート内容はほんの一部です。 セッションのアーカイブや「Book of News」などを見て日々のキャッチアップにお役立てください。 

Microsoft Build Seattle Tourの現地の様子

今回通常の参加ではなく、Microsoftが提供してくださっているMicrosoft Build Seattle TourでBuild参加しています。

電通総研からは3名で参加しました!

昨年も参加している先輩社員と一緒なのでセッションの回りかたやMicrosoft社員の方とのコミュニケーションも含めてフォローしてくださいます!

共に参加した御手洗さんの速報レポートもありますので興味のある方は是非。

Microsoft Build 2025 キーノート速報

こんにちは、AITC 製品開発グループでKnow Narratorのプロダクト・オーナーをしている御手洗です。この記事では「キーノート速報」(速報といっても10時間ほど経っていま…

ツアーのため、同じツアーに参加している日本の会社の方と交流ができ、一緒にセッションを傍聴し、それぞれが得た別のセッション情報や実案件の知見を交換できました。

またシアトルのMicrosoft本社に行けて非常にうれしかったです。

(広すぎてもはや街でした)

感想と学び

感想

世界中の開発者が集う中、AI Agentを中心としたMicrosoftの発表を聴講して、自分が最先端の技術に触れられる場に立てているとを実感し、非常に良い経験となりました。

改めてですが、電通総研が若手でも裁量を持って海外出張に挑戦できる環境と実感しました。

学び

Azureの知識、英語、発信力など自分にまだまだ不足しているものも痛感し大きな学びとなりました。

また、他社の人もAIの利用を推し進めている中で同じような課題にぶつかっていると今回Microsoft Build Seattle Tourツアーに参加して感じました。

来年参加する人への Tips

最後に、今後海外出張に参加する方へのTipsをいくつか紹介します。

英語での発表はWordのディクテーションやOtterなどのツールを活用して、セッション内容をリアルタイムで文字起こしをすると非常に有用です。

文字起こしを生成AIを使ってまとめておくと、後で振り返れるので出張報告の際や非常に便利です。

まとめ

Microsoft は AI Agent をプロダクトの中心に据え、認証・開発ツール・クラウド基盤まで一気通貫で整備を進めています。今後は、AI Agent を活用した業務効率化や新しいプロダクトの開発が加速すると予想されます。

来年のMicrosoft Buildにも参加予定なのでAITCのコラムにも注目していただけると嬉しいです。

最後に2年目の若手が、海外出張に挑戦し、上記のような学びを得られる環境であることは、AITCのカルチャーの一つであり、若手社員が成長できる機会を提供していると感じました。

以上、皆さんの参考になれば幸いです。

  

執筆 AI製品開発グループ 青木 尚人