統合されたMicrosoftスタックで生成AIの活用を最短・安心に

こんにちは。AIトランスフォーメーションセンター センター長の深谷です。
先日、私は以下のような「Microsoft Top Partner Engineer Award(Azure Data&AI)」を受賞させていただきました。
生成AIを企業で活用したいと考える企業が増える一方で、「どうすれば安全かつ迅速に導入できるのか」「どの技術を組み合わせればいいのか」と悩む声も聞かれます。私たちもお客様から、技術系では、RAG(Retrieval Augmented Generation)とAIエージェントの活用方法や、最新のMicrosoft技術動向についてご相談が増えています。
この記事では、Microsoftの統合された技術スタックを活用することで、企業の生成AI導入が最短・安心で実現できるかを解説します。ポイントとなる統合ID管理からデータ基盤、モデル運用、セキュリティ、そして現場での利活用手段まで順に見ていきましょう。
目次
- 統合ID(Entra ID)で「誰(AIエージェント含)が何をできるか」を一元管理
- データ基盤(Microsoft Fabric / OneLake)+検索(Azure AI Search)で「正しい文脈」にアクセス
- 様々な生成AIモデル運用(Azure OpenAI / Azure AI Foundry)を安全に可能に
- セキュリティ&ガバナンス(Defender / Purview / 情報漏えい防止 / 監査)で「継続運用」
- 簡単な業務はCopilot(Copilot for Microsoft 365 / Copilot Studio / Power Platform)で現場浸透
- より難易度の高い業務はAzureで対応:生成AI活用のハードルを下げる「Know Narrator/ノウナレーター」
- まとめ
統合ID(Entra ID)で「誰(AIエージェント含)が何をできるか」を一元管理

生成AIを安全に業務活用するには、「誰が何をできるか」の管理が欠かせません。
MicrosoftのEntra ID(エントラID、旧Azure AD)を用いた統合ID管理なら、利用者の認証・権限を一元的に制御できます。普段社員が使っているMicrosoftアカウントで生成AIツールにログインさせ、社内のシングルサインオンや多要素認証と連携することで、不正利用や情報漏洩のリスクを大幅に下げられます。また、ユーザーや部署ごとにアクセスできるデータ範囲や利用可能なAI機能を細かく設定することも容易です。
たとえば機密データへの質問は管理職のみ許可し、それ以外の従業員は公開情報のみAIに参照させる、といった制御もEntra IDの仕組みを通じて実現できます。全てのアクセスが統一されたID基盤で記録・監査されるため、内部統制やコンプライアンスの面でも安心です。
また、AIエージェント時代においては、企業の情報システムは新たな課題に直面しています。それは、「エージェントをどう管理し、どう信頼するのか」という問題です。これまでのIT環境では、人間のユーザーやアプリケーションがアクセス主体であり、それぞれにIDを発行し、認証・認可の仕組みを設けてきました。しかし、今や会話を通じて自律的に判断し、外部システムと連携するエージェントが業務を担う時代に移りつつあります。
Microsoft が提唱する Entra Agent ID は、まさにこの課題に応える仕組みです。AIエージェントそのものに固有のIDを与え、アクセス権限を明示的に制御することで、従来のアプリやユーザーと同様に 「誰が作ったエージェントなのか」「どの範囲まで動けるのか」 を可視化・管理できます。これにより、エージェントが人間の代わりに業務を代行する際にも、企業のセキュリティポリシーに沿った安全な利用が保証されるのです。
Agent ID の登場は、エージェントが「人」「アプリ」に続く第三の主体として正式に扱われ始めたことを意味します。まさに 「エージェント時代のID管理」 という新しいレイヤーが生まれたと言えます。
データ基盤(Microsoft Fabric / OneLake)+検索(Azure AI Search)で「正しい文脈」にアクセス

生成AIを業務で使う際に懸念されるポイントの一つが「ハルシネーション(幻覚)」です。AIが事実に基づかない回答をしてしまうリスクを下げ、常に正確な情報に基づいて応答させるには、社内の信頼できるデータを文脈としてAIに提供することが重要になります。
Microsoftの最新データプラットフォームであるMicrosoft Fabricとその統合データレイクであるOneLakeを活用すれば、社内の様々なデータソースを一箇所に集約できます。さらにAzure AI Search(Azureの高度な検索サービス)を組み合わせることで、この統合データから必要な情報をインテリジェントに検索し、AIへのプロンプトに関連資料として組み込めます。
この一連の仕組みにより、AIは常に“正しい文脈”にアクセスしたうえで回答を生成するようになります。こうしたRAG(Retrieval Augmented Generation)のアプローチがMicrosoftスタック上でシームレスに実現できます。結果として回答の正確さが向上し、社内データの有効活用にもつながります。
様々な生成AIモデル運用(Azure OpenAI / Azure AI Foundry)を安全に可能に

生成AI活用の要となるAIモデル自体についても、Microsoftのクラウド基盤を使うことで安全かつ柔軟な運用が可能です。Azure OpenAI Serviceでは、OpenAI社のGPT-5など最先端の大規模言語モデル(LLM)をAzure上で利用できます。
企業にとって嬉しいのは、Azure OpenAI経由でモデルを使う場合、プロンプトや生成内容のデータが外部に漏れたり、学習に勝手に使われたりしないよう保護されていることです。自社専用の隔離された環境で強力なAIモデルを呼び出せるため、機密情報のやり取りも安心して行えます。
さらに、新しいAzure AI Foundryを活用すれば、カスタムモデルのホスティング、複雑なAIワークフローの構築もAzure上で完結できます。例えば、独自に調整(ファインチューニング)した業種特化モデルを社内展開したり、複数のモデルやツールを組み合わせたAIエージェントを試作するといった高度な取り組みも、Azure AI Foundryの環境下で行えるようになります。
AIエージェントについても、Microsoftは新たなオープン標準プロトコルMCP(Model Context Protocol)を取り入れ、Azure上でAIエージェントの安全な実現にも取り組んでいます。つまり、シンプルなQ&Aから高度な自律エージェントまで、必要に応じたモデルと仕組みをAzureで選択・運用できるため、企業は用途に応じて最適なアプローチを低リスクで採用できるのです。
セキュリティ&ガバナンス(Defender / Purview / 情報漏えい防止 / 監査)で「継続運用」

技術導入時だけでなく、継続的な安全運用を支える仕掛けもMicrosoftスタックには揃っています。
AzureおよびMicrosoft 365には、エンタープライズ向けの強力なセキュリティサービスやガバナンス機能が標準で組み込まれています。具体的には、クラウド上の脅威検出や対策を行うMicrosoft Defenderシリーズ、機密データのライフサイクル管理やデータ分類を行うMicrosoft Purview、そしてメールやTeams・チャットでの情報漏えいを未然に防ぐデータ損失防止(DLP)機能などが挙げられます。また、Azure OpenAIや各種サービスの利用ログを監査証跡として蓄積し、万一の不正利用やトラブルの際に追跡できる体制も構築可能です。
これらのセキュリティ&ガバナンス機能が統合されていることで、生成AIの導入後も安心して“使い続けられる”環境を維持できます。外部サービスを寄せ集めて独自に構築した場合に比べ、Microsoftスタックならセキュリティポリシーの全社適用やアップデートも一貫して行えるため、最新の脅威にも迅速に対処可能です。社内のセキュリティチームや情報システム部門にとっても管理がしやすく、ガバナンスを効かせたまま生成AI活用を拡大していける点は大きな利点でしょう。
簡単な業務はCopilot(Copilot for Microsoft 365 / Copilot Studio / Power Platform)で現場浸透

生成AI活用の価値を素早く実感するには、現場のユーザーが日常業務で使えるツールにAIを組み込むのが近道です。
Microsoftは既存の業務アプリケーション群にもAIアシスタント機能を提供し始めています。その代表格がMicrosoft 365 Copilotで、WordやExcel、Outlook、Teamsといったオフィスツールに生成AIの力を融合させ、文章の下書き作成やデータ分析、会議内容の要約などを自然な対話で行えるようにします。日々使い慣れたアプリの中でAIの支援を受けられるため、生産性向上の効果がすぐに現れます。
さらに、Copilot Studioという機能では、コードを書かずに自社固有の業務シナリオに合わせたカスタムAIアシスタントを作成することも可能です。例えば自社のデータベースに接続し在庫状況を問い合わせるボットも、Copilot Studioを使えば専門のAIエンジニアなしで実現できます。加えて、Power Platform(Power Apps、Power Automate、Power Virtual Agentsなどのローコードツール群)にもGPTモデルやAI Builderが統合されており、ノンコーディングでチャットボットや自動化フローを作成することができます。これらの仕組みを活用すれば、各部門の現場レベルで「ちょっとした業務をAIで効率化する」取り組みがすぐに始められます。
短期間で効果を実感できる成功体験が積み重なれば、社内のAI活用に対する理解とモチベーションも高まり、DX推進への土壌が醸成されるでしょう。
より難易度の高い業務はAzureで対応:生成AI活用のハードルを下げる「Know Narrator/ノウナレーター」

一方、企業によっては業務固有の高度な要件や複雑なプロセスが存在し、市販のツールだけでは対応しきれないケースもあります。そのような難易度の高いシナリオには、基盤となるAzure上でカスタムソリューションを構築することになりますが、「一から自社開発するのはハードルが高い」と感じるかもしれません。
そこでお勧めしたいのが、当センター(電通総研 AIトランスフォーメーションセンター)の提供するエンタープライズ向け生成AIプラットフォーム「Know Narrator/ノウナレーター」の活用です。
Know Narratorは、Azureを基盤に、企業が生成AIを安全に導入・活用するためのソリューションです。社内専用の対話AI環境や社内文書を参照するRAG機能(マルチモーダルRAG対応で文書内の画像もOK)、生成AI活用データの分析機能、固有の業務にすぐ利用出来るAIエージェントなど、目的に応じた機能を備えた生成AI活用ソリューションです。
Know Narratorを活用すれば、様々な企業の生成AI活用を行っている我々のノウハウが詰まったフレームワーク上でプロジェクトを進められるため、自社単独で模索するよりも格段に導入がスムーズになります。実際にKnow Narratorは既に多数の企業で採用されており、当社のデータサイエンティストやAIコンサルタントがPoCから本番展開まで伴走支援しています。
お客様のAzure環境内で完結しデータが外部に出ないアーキテクチャ、Entra ID連携による社内認証・権限管理、利用ログの蓄積と分析による効果測定など、エンタープライズに求められる安心の仕組みを網羅している点も評価されています。生成AIの導入効果を最大化するには、こうした包括的ソリューションを活用しつつ、自社に最適な形でMicrosoftスタックを使いこなすのが賢明と言えるでしょう。
まとめ
生成AIは企業に革新的な価値をもたらす一方で、技術の急速な進化にキャッチアップしつつ安全面にも配慮した導入を行う必要があります。そこで強い味方になるのが、統合されたMicrosoftの技術スタックです。
Entra IDによるID管理から始まり、Microsoft Fabric + OneLakeでのデータ統合とAzure AI Searchによる文脈提供、Azure OpenAIやFoundryでのモデル活用、Defender/Purviewによるセキュリティ確保、現場業務への適用から高度なAI展開まで、一貫した基盤上で実現できます。統合された環境だからこそ実装がスピーディーで、各機能が有機的に連携しあうため追加開発の手間や不確実性も少なく、結果として最短かつ低リスクでの導入が可能になります。
弊社AIトランスフォーメーションセンターでは、こうしたMicrosoftスタックのメリットを最大限に活かしながら、お客様ごとの課題に合わせた生成AI活用をご支援しています。まずは小さな成功体験から着実に広げていくことで、企業全体のDXと競争力強化につなげていきましょう。
執筆
AIトランスフォーメーションセンター センター長
深谷 勇次


