顔画像解析AIを活用した頚部ジストニアの定量評価手法に関する論文が、国際学術雑誌「Journal of Clinical Psychiatry」に掲載されました

名古屋大学 稲田俊也特任教授、小笠原一能助教と、AITCの田辺、深谷が、実施している共同研究*1を通じて執筆した論文「Severity of Antipsychotic-Induced Cervical Dystonia Assessed by the Algorithm-Based Rating System」が、精神医学分野における国際学術雑誌「Journal of Clinical Psychiatry」に掲載されました。

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掲載誌 Journal of Clinical Psychiatry
論文タイトル Severity of Antipsychotic-Induced Cervical Dystonia Assessed by the Algorithm-Based Rating System
著者 Toshiya Inada, MD, PhD; Yuta Tanabe, MS; Yuji Fukaya, MS; Kazuyoshi Ogasawara, MD, PhD; and Nobutomo Yamamoto, MD, PhD

本論文では、顔画像解析AIを活用した独自の判定アルゴリズムによって、薬原性錐体外路症状*2の一種である「頸部ジストニア」の重症度を高精度に判定する手法について提案しています。

これまで目視によって判定が行われてきた頚部ジストニアの重症度評価は、専門の精神科医の間でも評価がばらつくことがあり、精神科医の経験によらず、安定した評価を実施することが求められてきました。 本論文が提案する、AI技術を利用した評価が可能になることで、このような課題が解決され、症状の早期発見及び精神疾患患者のQOL向上に貢献することが可能であると考えています。

顔画像解析AI(Mediapipe FaceMesh)によって得られる顔の点群座標データの一例
ジストニアにおける頸部の傾きの種類

なお、本論文のテーマであるジストニア以外にも、錐体外路症状には、本人の意思とは無関係に身体の一部に異常で不規則な運動が生じる「ジスキネジア」、唇や手にリズミカルな震えが起こる「振戦」などの症状があり、こうした各症状の判定に対するAI活用についても、本共同研究において取り組んでいきます。

最後に

電通総研・AITCでは、本事例のようなライフサイエンス・ヘルスケア分野におけるAI開発及びアプリケーション開発を積極的に推進しています。 属人化された診断をAIで定量化することで、患者様の助けとなるアプリケーションを社会実装し、症状の早期発見、検査による心身の負担軽減、地域格差の緩和など多くのメリットをもたらすことを目指します。

本領域のAI活用についてご興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。

執筆
AITC AIコンサルティングIグループ
田辺 佑太

*1:【プレスリリース】ISIDと名古屋大学、AIによる錐体外路症状(EPS)重症度判定の共同研究を開始
※ 電通国際情報サービス(ISID)は、2024年1月より「電通総研」へ商号変更 https://www.dentsusoken.com/news/release/2022/0426.html

*2:薬原性錐体外路症状:統合失調症などの精神疾患を治療する目的で処方される抗精神病薬の副作用として出現する症状。稲田俊也特任教授が開発したDIEPSSは薬原性錐体外路症状を8項目に分けてそれらの重症度を5段階で評価する尺度。