JSAI2023(人工知能学会全国大会)参加レポート

はじめに

こんにちは、AITC製品開発グループの岩本です。 ISIDは6月6日~6月9日に熊本で開催された2023年度 人工知能学会全国大会(JSAI2023)に参加しました。

昨年に続きISIDはJSAIのプラチナスポンサーとなっており、企業ブースの出展を行いました。AITCと製造事業部のメンバで出席し、ISIDとしては計3件の発表を行いました。

この記事では、学会の様子やセッション、企業ブースの内容について報告します。

(写真に写っていないメンバーも含めると、今回ISIDからは14人のメンバーが参加しました)

人工知能学会全国大会とは

人工知能学会全国大会は、今年で37回目の開催となる人工知能(AI)の研究発表を行う学会で、機械学習から人工知能の応用の話まで幅広く発表があります。

今年も昨年と同じくオンライン参加と現地参加のハイブリッドでの開催となりました。2023年度の参加者数は3,527人で過去最多となり、そのうち現地参加の割合は約7割でした。コロナ前の2019年は現地参加のみの開催で参加者数が2,897人だったため、今年の現地参加者数はコロナ前の水準に近いものだったと言えます。

他の学会でもハイブリッド開催が増えていることもあり、現地にいながらも朝はホテルからオンライン参加、午後から現地参加といった柔軟な参加の仕方が定着してきた印象がありました。

ブースの様子

企業ブースでは、AITCの活動内容とEngineering AIについての紹介を行いました。ブースに来訪いただいた学生の方には研究内容を伺いつつ、関連するAITCの研究内容について紹介させていただきました。

企業の方の来訪も多く、その中でもEngineerign AIに興味を持ってブースに来られる方の割合が多かったです。業務の具体的な困りごとについて相談いただき、それを解決できそうなISIDのソリューションを紹介させていただきました。

※Engineering AIとは、製品企画や設計、試作・評価などのエンジニアリング業務に対するISIDのAIソリューション群です。

mfg.isid.co.jp

(ブース来訪者に説明を行う様子)

(AITCの紹介パンフレット)
(Engineering AIの紹介パンフレット)

発表の様子

今回、ISIDからは以下の3件の発表を行いました。

エンジニアリングへのAI適用状況について

6/7(水)一般セッション

発表者:飯干茂義、横井俊昭

主にEngineering AIとは何か、Engineering AIのソリューションの一つであるCAEサロゲートモデルの概要とその適用事例についての発表です。CAE(Computer Aided Engineering)とは製品などの設計案をシミュレーションにより評価するシステムのことですが、CAEサロゲートモデルはCAEのインプットとアウトプットの対応をAIで学習することで計算時間を大幅に短縮することができます。

Engineering AIご紹介-エンジニアに提案し判断を支援するEngineering AIとは

6/7(水)インダストリアルセッション

発表者:千葉栄馬

Engineering AIの概要に加え、その詳細な適用範囲と現在ISIDで取り組んでいる「Generative Design」について重点的に紹介しました。Generative Designとは3D生成AIとサロゲートモデルを組み合わせたワークフローのことです。製品仕様を入力として与えると、3D生成AIがサロゲートモデルのモデルのフィードバックを受けながら最適なモデルを生成し、アウトプットとして仕様に沿った設計案が得られます。Generative Designによって高速で対話的な設計を行うことができます。

文章分類モデルの不確実性に基づく人間によるデバッグ手法の提案

6/8(木)一般セッション

発表者:太田真人、ファイサル・ハディプトラ

データ分析に精通していないドメイン専門家がモデルの継続的な精度改善に参加することを目標とした、分類モデルの精度改善フローについての発表です。モデルによる分類根拠の不確実性が高い部分を文章中でハイライトすることで、非データ分析者でも容易にデータの修正を行うことができます。修正後のデータを用いてデータ拡張を行うことで分類精度の向上が期待できます。実際に、小規模なデータセットではルールベースのデータ拡張手法よりも提案手法の分類精度が高かったことが示されました。

(太田さんの発表の様子)

セッション聴講

全体を通して、人工知能学会のセッションは自然言語処理学会(3月にAITCとして参加しました)よりも分野が幅広く、企業での応用事例も多く話題に上がっていたように思います。

また、昨今話題の生成系AIについてのセッションも多くありました。その中でも、芸術分野へのAIによる影響、AIと人権、AIの社会受容性、基盤モデルの最新技術動向、AIに関する国際標準など、実社会での普及に向けた議論を促す内容のものが増えている印象でした。

個人的には、Transformerの需要予測への適用例を見ることができて嬉しかったです。大学院時代に需要予測の研究をしていましたが、Transformerの需要予測への適用例はほとんどありませんでした。さらに、当時課題だった再帰誤差の蓄積にも対処できるモデルだということで、実際に提案手法を使って実験してみたいと感じました。

おわりに

この記事では、ISIDがJSAI2023に参加した様子について報告しました。 今回の学会に参加したことで、幅広い分野の最新動向に触れ、業務適用へのヒントを得られたように思います。また、多くの学生さんや企業の方と直接お話しする機会が得られたことも良い刺激となりました。

今後もAITCでは、日々の研究の成果を学会で発表していきたいと思います。

現在、AITCでは一緒に働くメンバーを募集しています。 まずは下記URLから気軽にカジュアル面談にご応募ください。

isid-ai.jp

執筆
AITC AI製品開発グループ
岩本 佳己