こんにちは!AI製品開発グループの太田と福竹です。
私たちは、AITCと同じくX Innovation(クロスイノベーション)本部内のINNOLAB(イノラボ)と、スマートソサエティセンターの行政デジタル部の方と共に、ChatGPTの自治体向け活用方法を検討していました。
その中で実際に自治体の担当者の方にヒアリング、検証した内容を報告します。
- 今回取り組んだこと
- Know Narrator Searchとは
- プロンプトの実例と生成結果
- 自治体担当者様との議論
- プロンプトエンジニアリング Tips
- KN Searchでの現状の課題感
- さいごに
今回取り組んだこと
自治体の職員向けに2つのテーマ、「まちづくり計画に関する企画立案やQAなどの生成」と「議事録をもとに議会答弁の生成」に取り組みました。
使用したデータは、まちづくり計画と議会の議事録(数年分)です。まちづくり計画には、環境、社会福祉、防災など多義にわたる計画が継続/終了したもの含めて存在します。
仕組みは、Know Narrator Search (以下、KN Search)を利用しました。
Know Narrator Searchとは
AITCが開発する社内文書を参照しながらChatGPTが回答を生成するRAG(Retrieval-Augmented Generation)システムです。
お客様はデータを用意して所定のSharePointフォルダにアップロードするだけで、KN Searchを利用できます。
プロンプトの実例と生成結果
今回は、ある自治体の方に協力いただき、実際に業務でKnow Narrator Searchを利用するならどういう使い方をしたいかというヒアリングを実施し、実際に試して頂きました。
以下は、「どの業務でKnow Narrator Searchを利用したいか」という質問に対するアンケート結果です。
議会答弁や企画立案といった人による思考を要求する業務で、ChatGPTを活用できるのではないかというご意見が多いという結果となりました。
各QAカテゴリのプロンプト(KN Searchへの指示文)と得られた回答のサンプルを幾つか紹介します。(実際に自治体の皆様に入力頂いたものからは改変しています)
議会答弁案を作る
【プロンプト】 あなたは自治体において、ITシステムの普及を推進する立場にあります。 自治体に所属する議員からの質問に対する、回答案を作成してください。回答には以下の観点を踏まえてください。 ・システム導入支援 ・各課の課題等のヒアリング 質問 〇〇市では、ITシステムに関する専門知識を有した外部人材を雇っている。外部人材を雇用したことによる成果を教えて欲しい。
【回答】 本市では外部専門人材の採用を通じて、システム導入の支援、課題ヒアリング、改善提案を行い、 既成概念にとらわれずに物事を見る新しい視点を提供してもらうことで、ITシステムの導入や運用の効率化と業務プロセスの改善を達成しています。これらの専門家は、最新の技術とトレンドに精通しており、その知識を活用してスムーズなシステム推進を可能にし、安定稼働や問題解決にも貢献しており、結果として多岐にわたる事業の推進と自治体のサービス向上に大きく寄与しています。
企画立案の叩きを作る
【プロンプト】 あなたは自治体において、交通政策を実現し、市民の交通の安全を確保する立場にあります。 市内の免許更新センターで発生している道路渋滞について、市民の利便性を確保しつつ、渋滞を解消できる対策の案を10個考えてください。
【回答】 市内の免許更新センターでの道路渋滞解消のための対策案を以下に示します。 1. 交通量のピーク時には、免許更新センターの周辺道路に一時的な交通規制を導入し、渋滞の発生を抑制する。 2. 免許更新センターの周辺に駐車場を増設し、駐車スペースの不足による渋滞を解消する。 3. 免許更新センターの営業時間を延長し、利用者の分散を図る。 4. 免許更新センターへのアクセスを改善するため、周辺道路の拡幅や信号機の設置などの道路整備を行う。 5. 免許更新センターでの手続きをオンライン化し、来場者数を減らすことで渋滞を軽減する。 6. 免許更新センター周辺に公共交通機関のアクセスを改善し、利用者が車を利用せずに来場できるようにする。 7. 免許更新センターでの手続きを予約制にすることで、来場者の流れをスムーズにする。 8. 免許更新センター周辺に駐輪場を整備し、自転車利用者の利便性を向上させる。 9. 免許更新センターでの手続きを分散するため、他の地域にも免許更新センターを設置する。 10. 免許更新センターでの手続きを委託業者による代行サービスにすることで、来場者数を減らし、渋滞を解消する。 これらの対策を実施することで、免許更新センターでの道路渋滞を解消し、市民の利便性を確保することができます。
計画文書の施策を確認
【プロンプト】 健康推進課が出した各種計画を元に、現在実施されている子育てに関する施策と、それぞれの概要をまとめてください。また、根拠となる文書を示してください。
【回答】 # 説明文(修正版) この地域の子育てに関する施策は、総合的な計画に基づいて実施されています。これらの計画には、子育て家庭への経済的支援、子どもの健康と教育を支援するための取り組みが含まれており、その具体的な施策には、地域の子育て支援拠点の整備、子育て援助活動の支援、子どもの医療支援、児童手当の給付などがあります。 また、子どもの健やかな成長を支え、教育力の向上と子育て環境の充実を目指す行動計画があります。これには、幼児教育の振興、就学援助、高校生の奨学金支給などが含まれています。 さらに、子どもの未来を応援し、権利を保障し、育成環境を整備する計画もあります。これは、子どもの権利に関する啓発活動や健全な成長を支える事業展開を通じて具体化されています。 これらの施策は、子どもとその家族が健やかに成長することを支援するためのものであり、地域社会において重要な役割を果たしています。 出典: 子ども育成課ホームページ 子ども・対策行動計画 次世代育成支援基本条例行動計画 子どもの未来応援計画
自治体担当者様との議論
デモ環境での検証をもとに、自治体担当者様とディスカッションをおこないました。
上記のプロンプト例では自治体様を特定できる内容を取り除いているためイメージしにくいですが、実際には、デジタル施策、子ども支援事業など、自治体様の施策が書かれた文書をデータとして読み込んだうえで、文章生成がおこなわれています。自治体様からも、これらの生成結果は、企画立案や議会答弁生成に対する一次回答や叩き台として利用可能、という評価を頂けました。
また、今回のテーマに限らず、自治体様の業務には、国からの通知・事務連絡などを整形して自分たちの自治体向けの文書を作成する、等の文章生成系のタスクが数多いことも分かってきました。社内文書を活用しなくても素のChatGPTを使い込むだけでも、相当の業務改善になるのではという所感を得ました。
(例:市民向けの広報文書やアンケート作成、内部向けの計画書作成)
プロンプトエンジニアリング Tips
本活動内で得たTipsも少しご紹介します。
出力して欲しい文章の傾向を(前提知識を保たない)ChatGPTにわかるように説明する
- NG例:
あなたは**市**課の自治体職員です。**について〜
- OK例:
あなたは自治体において、ITシステムの普及を推進する立場にあります。**について〜
- NG例:
RAGの場合…
参考にして欲しい文書が利用されるように、固有名詞をプロンプトに入れる
- NG例:
これまでの取り組みと市の方針を元に、**の計画を作成してください
- OK例:
令和n年度施政方針と、令和n年度予算計画を元に、**の計画を作成してください
- NG例:
一般常識と参照文書で得た知識を混成して出力してほしい場合は、その旨を指示する。
- NG例:
**について、マイナンバーカードの特性を踏まえて回答してください
- OK例:上記に
参考文章に情報が少ない場合、一般的な知識で回答を補ってください
を追加
- NG例:
以上のようなTIPSは、自治体様がプロンプト作成するうえで有効だと考えられます。
KN Searchでの現状の課題感
今回のトライアルで見えてきたKN Searchでの課題を説明します。 KN Search の回答生成アルゴリズムは、元の文書ファイルから一定の文字数で分割した文章のみを検索対象にします。
しかし、利用者は特定の条件のもとでの検索結果から生成される回答を求めています。 具体的な条件付けには、過去の議事録の時系列性、プロジェクトの進捗状況や地域の区別です。
現状だと、終了したプロジェクトが回答生成に含まれたり、予算に関しても過去の金額で回答されたりしています。また、議事録の古い情報と新しい情報が混在して回答されています。
さらにChatGPTが持つ知識とweb上の情報や社内文書の外部知識の両方を合わせた回答が求められる場合もあります。 質問によっては、社内文書には書いていないけども、ChatGPTが持つ知識では十分に回答できることもあります。 現状は、社内文書から回答をするように設定しているため、社内文書に情報がない場合、「わからない。」と答えるようにしています。 検索の知識と回答生成の知識の棲み分けなど、より高度な対話ができるように機能改善に努めます。 以下は、具体的な例です。
さいごに
今回のコラム以外の自治体様とも、生成AIを活用した取り組みを進めています。これらの取り組みをしていく中で、ChatGPTの自治体様での有効なユースケースや利用方法、課題等が明らかになってきています。それらの実績を踏まえて、スマートソサエティセンターとAITCが連携し、自治体様向けのChatGPTサービス「minnect(ミネクト) AIアシスト」を開発しました。
今回のブログの内容にご興味のある方は、ぜひ上記のリンクをクリックいただき、”製品・サービスに関するお問い合わせ先”からお問い合わせ頂きますようお願いいたします。
AI製品開発グループ
太田、福竹