はじめに
こんにちは。電通総研AIトランスフォーメーションセンター(AITC)の岩本です。
先日、電通総研は人工知能学会第38回全国大会(JSAI2024)に参加してきました。弊社のJSAIへのスポンサー出展は今年で3年目となります。電通総研はJSAIのゴールドスポンサーとなり、AITCと製造事業部のEngineering AIチーム合同で、電通総研の企業ブースを出展しました。
発表としては、一般セッションでEngineering AIからはマツダ株式会社様との共同研究について、インダストリアルセッションでAITCとEngineering AIの生成AIに関する取り組みについて、計2件の発表を行いました。
この記事では電通総研の発表や企業ブースの様子をお伝えします。
JSAI2024について
JSAI2024は静岡県浜松市のアクトシティ浜松で開催されました。
今年の参加者数は3,792人で、去年の大会参加者数の3,527人を超えて過去最多となりました。また、協賛企業数も113社と過去最多で、去年の89社を大きく上回りました。参加者から生成AIの流行によるAIへの関心の高まりが伺えます。
来年のJSAIは大阪で開催されることが発表されており、万博開催も相まってさらなる大会規模が予想されます。
ブースの様子
企業ブースでは電通総研のEngineering AIチームとAITCが合同で出展し、それぞれの研究成果や取り組んでいる技術について紹介しました。
AITCはエンタープライズ生成AI活用ソリューション:Know Narratorを開発しています。Know NarratorシリーズはChat with Vision(対話型生成AI)、Insight(チャット履歴分析)、Search(エンタープライズRAG)の3つのソリューションからなり、お客様のニーズに合わせて選択することができます。また、Know Narrator APIによって、お客様独自のシステムにKnow Narratorの機能を組み込むことができます。
AITCはその他にも需要予測、画像処理、AI教育など様々なソリューションを提供しています。
Engineering AIでは、サロゲートモデルや3次元モデル形状生成AI、それらを組み合わせたGenerative Designというシステムを提案しています。
Generative Designでは、設計仕様を入力するとAIが複数の設計案を自動生成し、最適な設計を提案します。これにより、従来の最適化よりも広範な設計オプションを提供し、迅速な評価と探索を可能にします。
Engineering AIはその他にも様々なソリューションを提供しています。
セッション
今回、電通総研からはインダストリアルセッション1件と一般セッション1件、合計2件の発表を行いました。
拡散モデルを応用した自動車構造部品の断面構造提案
5/28(火)一般セッション
発表者:西原 剛史※1、海氣 絵里※1、鈴木 香織※1、大嶺 慶太※1、横井 俊昭※2、中村 秋吾※2、中本 昌洋※2
(※1 マツダ株式会社、※2 株式会社電通総研)
自動車部品の設計においては、高いエネルギー吸収性能を維持しつつ軽量化を図ることが求められます。従来の手法ではパラメトリックな設計が主流で、形状の自由度が制限されますが、この研究ではAIと拡散モデルを使用して設計を高速化し、より広い探索領域の中から目標のエネルギー吸収性能を満たしつつ、より軽量な断面構造を提案する手法が考案されました。
電通総研のLLMエージェントの技術開発や製造のAI活用事例紹介
5/29(水)インダストリアルセッション
発表者:太田真人、横井 俊昭
AITCとEngineering AI合同での発表でした。
AITCからは社内でのAIエージェントの技術検証の取り組みを紹介しました。AIエージェントとは与えられた指示に対して自律的に計画を立て、ツールを利用し反復的に自己修正することで高度なタスクを遂行するシステムです。社内検証としてKnow Narratorの問い合わせ窓口対応を行うAIエージェントを作成し、その結果について報告しました。
Engineering AIからは3D設計案の自動生成を行うGenerative Designについての紹介を行いました。Generative Designは実験データと官能評価の関係をモデル化する技術や、大規模シミュレーション計算をAIモデルで代替する技術などを組み合わせて実現されたシステムです。また、一般セッションにてマツダ株式会社様と合同で発表した手法はGenerative Designに拡散モデルを取り入れて設計を高速化した手法であり、こちらについても紹介しています。
終わりに
この記事では電通総研がJSAI2024に参加した様子をお伝えしました。
今回は企業ブースに出展している他の企業の方とも交流する機会が多く、次々と新しいAI製品やソリューションが世に出てくる中、各社の様々な工夫を知ることができました。
去年の学会参加時は、電通総研ではAIチャット製品であるKnow Narrator Chatを提供開始した直後でしたが、現在はAIチャットやRAGは珍しいものではなくなり、改善や工夫が求められるフェーズに入ってきたように思います。
AITCではそのような技術の一つとしてAIエージェントに着目し、研究を続けています。
今後もAITCでは、日々の研究の成果を学会などで外部に発信していきたいと思います。
執筆
AITC AIコンサルティングGグループ
岩本佳己